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高大連携1:学部をどう選べばいいか?

最終更新: 10月17日

私は前任地である大阪大学理学部生物科学科でオープンキャンパス委員や広報委員を長く務めていましたが、そこで高校生が必要としている情報が大学側から充分に伝えられていないことを痛切に感じました。


例えば、、、 ・生物/生命系が学べる学部は、医・薬・農・理・工などがある。パンフレットを見てもだいたい同じ。一体どう選べばいいのか? ・就職に有利な所を選べばいいのか?理学部は就職に不利なのか?(特に親御さんから質問されます) ・研究費は東大がダントツに獲得しているらしいが、それ以外の大学では研究できないのか? これらに対する私の答えは大阪大学理学部生物科学科HPに掲載されておりますので、許可を得た上で「高大連携1〜3」の3つの記事として転載しておきます(一部改編を含みます。) なお、基本的には私個人の見解であり、所属組織の公式見解では無いことをご承知おき下さい。



「理学部って何をする所ですか?」「例えば生物を学ぶのなら、農学部・薬学部・工学部と何が違うんですか?」という質問を、高校生の皆さんからよく受けます。(以下の記事において、筆者木村が生物系の教員なので生物学を中心に話をしますが、理学一般に共通する話題です。)


理学部では、これまでに明らかになった生命現象を学ぶ事に加えて、生命現象の根本的な仕組み(メカニズム)を明らかにする方法を理解し、また自らの手で解き明かすことを目指します。すなわち、理学部の教育や研究とは「サイエンス」そのものなのです。この「サイエンス」としての基礎的な生命科学研究が積み重なる事によって、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)やiPS細胞などのように社会的に大きな影響を与える事ができます。


一方で、農学部・薬学部や一部の工学部においても、生命現象に関する教育や研究を行っています。しかし、理学部が「生命現象の理解」自体を目標にしている事に対して、農学部や工学部は農業や工業や食品業について、また薬学部は薬について学ぶ事が最も重要な目標になります。大学卒業に必要な単位数は同じですから、農・工・薬学部では、農業・工業・製薬または薬剤そのものに関連した講義が必然的に多くなります。「大学を卒業したらぜひ農業に従事したい」「食品会社に就職したい」という人は農学部へ、「『もの作り』に関わりたい」という人は工学部へ、また、薬剤師になりたい人は薬学部へ入学すべきでしょう。


しかし、もしあなたが「幾つかの分野に興味があるけど、就職先についてはまだ考えていない」という気持ちであるのなら、以下の2点を考えてみて下さい。


1)大学卒業時の就職先は、学部にそれほど縛られません 上に挙げたように、就職希望がハッキリしている場合は、関連した学部に入学した方が良いと思います。しかし、様々な大学の学科の就職先を見比べてみれば、卒業生の就職先は予想以上に多様であることが分かるでしょう。大学院に進めば当然専門性が高くなりますが、それでも意外に就職先はいろいろあります。(私は農芸化学科という食品業や製薬業と結びつきの深い学科の出身で、当時は「あの研究室に配属されたら味の素/協和発酵/エーザイに就職できる」などと言われていましたが、同窓生と話をしたら「もうそんな時代じゃない。結局は、その学生が『できる』かどうかだよ」と言われました。)


2)何を学ぶために時間を費やしたいですか? 年単位の時間を掛けて物事を体系だって学ぶことができる機会、学ぶことだけに十分な時間を費やすことができる機会は、大学および大学院があなたの人生でおそらく最後になるでしょう。そのような貴重な機会に、あなたは何を学び、身につけたいですか?


それぞれの学科において「何が身に付けられるか?」を知りたければ、私は各学科のシラバス(講義概要)を比べることをお勧めします。(それぞれの学科のシラバスを見つけて比べることはかなり難しいのですが、ほとんどの場合学外からも閲覧できるはずです。) そして、シラバスを見て「どの学科なら耐えられそうか?」を考えてみて下さい。なぜなら、大学での4年間きちんと講義・実習・研究活動を続けることは大変なので(私たちの時代は楽でしたが、最近は少なくとも理系はずいぶん変わってきています)、辛い講義や実習で引っかかってしまうことも多いからです。


大学入試は人生における大きな節目の一つです。「至る所に青山あり」で、縁があった所で頑張れば何とかなるものですが、事前に何が起こるかは分かっておくに超したことはありません。この記事が皆さんのより良い選択につながれば幸いです。 

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名古屋市立大学大学院理学研究科・総合生命理学部

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