研究室の目標
知覚・記憶・判断・感情といった「脳のはたらき」は、神経細胞のネットワークからどのようにして生ずるのか?
この問いに答えるために、遺伝学・イメージング・ロボット顕微鏡・データ駆動型解析などさまざまな手法を用いながら、最もシンプルな脳を持つ線虫C. エレガンスを研究しています。
研究室の戦略と技術
「脳のはたらき」を理解するためには、脳がどのような刺激を受け取り、どのような応答行動を引き起こし、またそれらをつなぐ神経細胞達の活動がどのようであったか、を理解しなければなりません。
我々は、この「刺激〜神経活動〜行動」の関連を理解するために、共同研究者の協力を得て、ロボット技術や機械学習を用いた世界最先端レベルの研究手法を開発しています。
・揮発と拡散によって形成される匂い勾配継時変化の測定 Yamazoe-Umemoto et al., Bio-protocol 2018
・仮想匂い勾配を移動するC. エレガンスの行動と神経活動のロボット顕微鏡による同時計測 Tanimoto et al., eLife 2017, Tanimoto & Kimura, Bio-protocol 2021
・自由に移動行動するC. エレガンスの「狙い撃ち介入」による神経活動の制御 Tanimoto et al., Sci Rep 2016 (この研究のビデオが、2021年9月9日 NHK-BS「ヒューマニエンス」で紹介されました。関連ツイートはこちら。)
・機械学習技術による動物行動の分析 Yamazaki et al., Front Neurosci 2019, Maekawa et al., Nat Commun 2020, Maekawa et al., Nat Commun 2021(Yamazaki et al.,2019 の異分野融合研究が、2021年8月18日の Nature Index で紹介されました。)
・深層学習を用いた三次元細胞追跡技術による全脳細胞活動イメージング Wen et al., eLife 2021, Voleti et al., Nat Meth 2019
・機械学習による全脳活動パターンの解読 Wen and Kimura, Jpn J Appl Phys 2020
・数理モデルによる神経活動制御メカニズムの推定 Tanimoto et al., eLife 2017, Ikejiri et al., Neurosci Res 2022
・人工知能技術と組み合せて細胞領域を効率良く確定するためのソフトウェアの開発 Wen et al., Sci Rep 2023
上記の手法などを用いて、高等動物に共通するさまざまな「脳のはたらきの原理」を発見しています。
・ドーパミンによって増強される匂い学習 Kimura et al., J Neurosci 2010
・神経ペプチドは記憶の獲得に、ドーパミンは記憶の実行に関与 Yamazoe-Umemoto et al., NSR 2015
・解剖学的に対称なドーパミン細胞の非対称的な機能 Tanimoto et al., Sci Rep 2016
・意思決定のための細胞および分子メカニズム Tanimoto et al., eLife 2017
・経験依存的な二階微分項の消去による神経活動および行動の変化 Ikejiri et al., Neurosci Res 2022 (2023 NSR Best Paper Awardを受賞しました。)
・電気刺激で見つかった「感情」の原型 Tee et al., Genetics 2023
木村の全業績は以下をご覧下さい:Google Scholar, Web of Science, Researchmap
共同研究先
研究の発展、および大学院生の教育のため、国内外のさまざまな研究機関と共同研究を行っています。
国外:Columbia University(米国)、University of Edinburg (英国) など
国内:大阪大学、名古屋大学、名古屋工業大学、東北大学、生理学研究所、基礎生物学研究所、理化学研究所 など
研究室の教育
古典的な神経科学の知識から最先端の技術までを効率良く身に付け、世界で活躍できる研究者になるために、以下の機会を設けています。
・英語でのlab meetingとjournal club
・神経科学教科書 Neuroscience (Purves et al., Sinauer) の輪読(←大変好評です)
・基礎〜先端にいたる顕微鏡技術や生命科学のためのデータ科学技術の概要の講義(大学院講義と連携)
・分子遺伝学/イメージング/プログラミング/電子回路操作など、多様な手法を含む研究テーマの提供
・定期的な個人ミーティング
・明確な方針に基づいた口頭および文章発表手法の指導
・コラボレーションアプリの利用などによる徹底的な研究室内情報共有
・国内外の生命科学分野/ロボット工学/データ科学の研究者や、関連企業との速やかな連携
研究室メンバーの募集
高等動物にも共通する「知覚・記憶・判断・感情」などが神経細胞のネットワークから生ずる仕組みを、シンプルなC. エレガンスを研究対象として、あなたのオリジナルな視点から明らかにしてみませんか? 当研究室で研究および学習を行うことによって、ロボット顕微鏡・全脳イメージング・行動や神経活動の機械学習(=「人工知能」)解析など最先端の手法を身に付け、脳・神経科学に関して普遍的な議論できるようになります。当研究室では、アカデミアと企業のどちらに進むことも応援しています。詳しくは「参加希望」のページをご覧下さい。
研究室の成果
最新情報(過去の情報はこちら)
2024/10/7
木村が留学時のPIであったGary Ruvkun教授(米国ハーバード大学)が、ノーベル生理学医学賞を受賞しました‼️🎉🏆 microRNA world発見前夜の様子はこちら。
2024/10/1
M1(国費留学生)1名と学部3年生2名が入室してくれました❗️
2024/9/4-5
生理研研究会「大規模脳活動計測〜我々は何を測り、どこへ行くのか?」を主催しました。
2024/8/24
第26回活性アミンに関するワークショップで、木村が招待講演しました。
2024/7/25-26
Neuro2024で、卒業生の池尻博士が2024 NSR Best Paper Awardを受賞して、D1の鈴木とM1の佛願がポスター発表しました。
2024/6/22
M2の家田が、第57回日本発生生物学会年会でポスター発表し、優秀ポスター賞を受賞しました。🏆🎉 [リンク]
2024/4/1
今年は、3月に4人卒業して、4月に4人新たに合流してくれることになり、3割ほどのメンバーが一気に変わりました。名市大での木村研シーズン2の始まりかな⁉️
2024/3/12
卒業生である池尻洋輔博士のD論となったNeurosciece Research誌の論文が、2024年Best Paper Awardに選ばれました❗️(応募した訳でもなく、全く予想していなかったので、本当にびっくりしました。。。)[リンク]
2024/2/20
WorMING (Worm Meeting of Innovative Neuroscience Groups in Japan) とその後の懇親会を、キャンパス内のTAKI teriaで行いました。[写真]
2024/2/19
木村が、中谷医工計測技術振興財団の開発研究助成に採択されました。[リンク]
2024/2/16
M2の鈴木が、研究科の修論発表会で優秀発表賞を受賞しました。🏆🎉
2023/10/2
B3の学生2人が合流してくれました。どうぞよろしく!
2023/9/25
昨年度まで大学院生だったLing Fei Teeが、8月29日にD論発表を行い、9月25日に博士号を授与されました。 👩🏻🎓 🎉 [写真]
2023/9/22
WorMING (Worm Meeting of Innovative Neuroscience Groups in Japan) を名市大で開催しました。meetingの後に、親睦会をキャンパス内のTAKI teriaで行いました。[写真]
2023/9/19
木村が、JST CREST「細胞操作」に研究代表者として採択されました。[関連ページ
2023/8/31
「腸と腸外組織コミュニケーション」研究会を、名古屋大学で開催しました。[ポスター]
2023/8/22-24
木村が、文科省 国際共同研究強化(B) の一環として、米国コロンビア大学のHillman研究室を再び訪問してきました。[写真]
2023/8/18
線虫C. エレガンスは刺激を感じ、記憶し、適切な行動を選択(「意思決定」)することが知られていました。今回私たちは、C. エレガンスにも「感情」の原型があると考えられることを初めて見出しました❗️ マレーシアからの留学生Teeを筆頭として、研究室の院生や米国ノースイースタン大学のYoung教授らとの共同研究の成果です。[論文][プレスリリース][関連ツイート]
2023/8/1-4
第46回 日本神経科学大会で、M2の鈴木が口頭発表、M2の相原とM1の木村がポスター発表しました。
2023/8/7
木村が、東京大学総合文化研究科の学部学生および大学院生に向けて、集中講義「モデル生物を再定義する 2023」を行いました。
2023/7/23
第56回 日本発生生物学会で、M1の家田がポスター発表しました。
2023/5/22
三次元画像データ処理のために、U-Netのような人工知能技術と組み合せて効率良く細胞の領域を確定するためのソフトウェア "Seg2Link"を発表しました。理研BDRに異動したWen元研究員による、本学医学研究科・澤本教授グループとの共同研究の成果です。[論文][プレスリリース][解説ツイート]
2023/5/14
2月に発表した池尻の論文をきっかけに、本研究室の活動が日本経済新聞に掲載されました。
2023/4/15
木村が、脳の医学・生物学研究会で講演しました。
2023/2/1
線虫の匂い受容ニューロンが嫌いな匂いを経験すると「ゲイン調節」として活動パターンが変わるのですが、数理モデルで解析したことで、この変化は「匂い濃度の2階微分項の消去」だけで説明できること、またこの「項の消去」に関わるであろう遺伝子も明らかにしました。「生物移動情報学」でご一緒した弘前大の岩谷靖先生、および木村が阪大でラボを持った時のお隣さんだった藤本仰一先生との共同研究による大学院生池尻の研究成果です。[論文][プレスリリース][解説ツイート][日経での記事]
2023/1/11
木村が、名古屋市立大学脳神経科学研究所IBSセミナーで講演しました。
2022/12/12
木村が、ExCELLSシンポジウムのミニセッションで講演しました。
2022/10/7
「動き回る線虫を自動的に追跡しながら超高速で三次元イメージングする顕微鏡」のための国際共同研究費を獲得しました。[リンク]
2022/10/1
新しく学部学生が3人加わりました。
2022/8/8
木村が、東京大学総合文化研究科の学部学生および大学院生に向けて、集中講義「モデル生物を再定義する 2022」を行いました。
2022/4/15
順天堂大学大学院医学研究科の洲崎悦生教授にお招き頂き、研究室見学&セミナーさせて頂きました。
2022/3/31
5年間、超級博士研究員として当研究室にDXをもたらしてくれたWen Chentao博士が、理研のSPDRとして神戸に異動しました。今まで本当にありがとう。これからもよろしく。
2021/12/13
大阪大学蛋白質研究所セミナー「多様なドーパミン神経伝達から脳を探る」で、木村が招待講演しました。[リンク]
2021/10/1
新しい学部学生が加わって、全部で13人のグループになりました。
2021/9/17
大阪大学情報科学の前川卓也准教授との新たな共同研究:深層学習の「注目 (attention)」機構を用いて、ドーパミン伝達が異常なヒト(パーキンソン病患者)、マウス、甲虫、線虫に進化を越えて共通する行動異常を発見しました。[リンク]
2021/9/9
NHK-BS 「ヒューマニエンス」で、Tanimoto, Zheng et al. (Sci Rep 2016) の研究成果が紹介されました。[リンク][関連ツイート]
2021/8/20
実験医学9月号に、Wenと木村の記事「クローズアップ実験法/自動細胞追跡ツール:3DeeCellTrackerで解析できることと使い方」が掲載されました。[リンク]